株価暴落の原因は新型コロナ禍だけじゃない!|株暴落の落とし穴とは?
新型コロナウィルスの感染が、2020年1月より、南極大陸を除いて世界中に蔓延し、WHO(世界保健機構)が、緊急事態宣言を発令して、世界中が歴史上まれにみるような事態になっています。
現在(2020年4月)、スウェーデンを除いた、世界各国の緊急事態宣言により、海、空、陸上の乗り物が封鎖され、自粛制限により、商業施設や観光名所には、人は、ほとんどいません。会社は、テレワークが推奨され、工場の閉鎖、操業停止などにより、経済が混迷しています。
2020年2月27日、アメリカの株式市場が2011年8月以来の大暴落を経験するなど、経済にも大きな影響が出てきています。
そして、2020年4月23日に、WHOの事務局長は、次のような発言をしました。
世界は私たちがいた元の姿に戻ることはできないでしょう。『新しい日常』になるはずです。
引用元:世界保健機構のテドロス事務局長の発言
『 世界は、元の姿に戻ることはできない?』どういうことなのでしょうか?
これについては、別の記事で取り上げたいと思います。
2020年2月27日、アメリカの株式市場が2011年8月以来の大暴落を経験するなど、経済にも大きな影響が出てきていました。
そして、2020年4月20日、ニューヨーク原油先物相場が初めて0ドル以下(ー37,63ドル)に暴落しました。
この記事では、株価暴落の原因は、新型コロナウィルスによるものともう一つ考えられるものは何かを探っていきます。
その前に、原油先物と原油先物相場がマイナスになったということは、どういうことなのかを説明したいと思います。
原油先物がアメリカ市場で大幅に下落、マイナス37,63ドルとはどういうこと?
ニューヨークの原油先物相場でマイナス値37.63ドルとは、いったいどういうことなのでしょうか。
その前に原油先物とは、何なのかを説明したいと思います。
原油先物とは、何なの?
原油先物とは、何なの?
投資をしている方は、ご存知でしょうが、そうでない方が大部分だと思うので、説明したいと思います。
(1)ある特定の石油商品(2)一定数量(3)あらかじめ決められた価格で(4)将来の一定期日に受渡を行う契約のことです。 将来の一定期日までに、当初の取引( 売りまたは買い) と反対売買(買いまたは売り)を行うことによって、契約から離脱することもできます。 その場合は、反対売買を行ったときに生じた損益を差金(差額)で決済します。
引用元:TOCOM
以上の説明から、物販の無在庫販売の仕組みに似ているようなところがあります。
項目 | 無在庫販売 | 原油先物取り引き |
出品 | 在庫なし | 在庫あり(灯油、ガソリン、LPGなど) |
注文(契約) | ○ | ○ |
商品を仕入れる | ○ | × |
在庫切れ | ○ | × |
発送 | ○ | ○ |
仕入れ価格の変動による契約からの離脱は、可能かどうか | × | ○ |
ニューヨーク原油先物がマイナス37,63ドルとはどういうことなの?
ニューヨーク原油先物がマイナス37,63ドルとは、いったいどういうことなのでしょうか?
株価の場合は、価格が0になると、その株の価値はないということになりますが、原油先物の場合は、コモディティ(商品)なので、実在しています。
なので、原油の価格がマイナスとなった場合は、『お金をあげるからどうかその商品を引き取ってくれませんか』という意味になります。
この場合は、1バレルにつき37,63ドル差し上げますから、どうか買ってくださいということです。
株価の大暴落は、新型コロナ禍の影響ともう一つは、何?
株価暴落の原因は、新型コロナウィルスの影響ともう一つ考えられるものは、何なのでしょうか?
株価が暴落しているのは、世界中にまんえんしたコロナ感染により、工場閉鎖や操業停止、また、空、海、陸の交通機関が封鎖され、商業施設の閉鎖などにより、産業が成り立たなくなっているからです。経済が混迷しているのは、誰の目にも明らかですね。
では、株価暴落のもう一つの原因は、何だと思いますか?
アメリカなどの、ニューヨーク株や日本株も歴史的な大暴落をしていますがその原因は?
もちろん、コロナによる経済の影響、コロナショックが原因ですが、それだけではない要因があるんです。
アメリカ株などが大暴落している本当の原因は、原油価格にあります。
では、原油価格大暴落の原因は、いったい何なのでしょうか?
なぜ原油価格がマイナスになったのか?
なぜ原油価格がマイナスになったのか?
事の発端は、3月5日に開かれたOPECプラス(湾岸諸国とロシア)による会合にあります。
3年間継続されてきた石油の協調減産の期限は、3月31日と期限が迫っていました。
コロナショックで産業が回っていない状況を打破するために、原油需要の落ち込みに歯止めをかけて、原油価格の回復のために協調して減産しようとしたサウジアラビアの意向を押し切り、ロシアは、石油の増産を要求しました。
そこで、サウジアラビアも増産して、欧州に働きかけ、ロシアよりも安く1バレルに付き8ドルの割引を提案しました。
これを受けて、世界一の上場企業サウジアラビアの「アラムコ」株が3月8日に初めて、公開価格の32リアル(960円)を下回りました。
2月半ばまでは、1バレル 50ドルだったアメリカ原油先物相場は・・・・・・
↓
3月9日 1バレル 30ドル割れる
↓
3月20日 一時20ドルを割り込んだ
↓
4月20日 マイナス37.63ドル 史上最安値?
と、どんどん暴落していき、最後にマイナス値になってしまいました。
つまり、原油価格の低下は、世界第2位の産油国サウジアラビアと世界第3位のロシアの石油価格戦争だったのです。
アメリカの原油先物だけがどうしてマイナスになったの?
では、どうしてアメリカ原油先物だけが、マイナスになったのでしょうか。
それは、アメリカのシェール石油に問題があります。
シェール石油は、富士さんの高さ約3000メートルの地下に眠っている石油を掘るので、かなりのコストがかかります。
もし、1バレル40ドル以下だと採算がとれなくなってしまうからです。
そして、3月初めのOPECプラスの会合で、石油の減産が決裂し、増産に向かったことと、3月31日で石油減産の3年間の契約期限がせまっていたことも影響しました。
新型コロナウィルスで景気が低下し、石油需要がないところに、3月31日の協調減産終了期限が差し迫っていたのです。
3月初めのOPECプラスでの会合では、サウジアラビアとロシアの意見が決裂、増産の可能性を示しました。となると、4月は、世界中に石油があふれ供給過多になって、原油安になり、需給バランスがくずれます。
そのまま、原油価格がくずれるとアメリカのシェール企業は採算が取れなくなります。
損益分岐点は、1バレル50ドルで1バレル40ドルになるとシェールガスが破綻するところも出てくる可能性があります。
1バレル35ドルになると倒産、経営難に陥る可能性があります。
現物の受け渡しが行われるオクラホマ州クッシング地区は貯蔵能力の限界に近付いており、売り手は在庫をさばきたいけど、買い手は価格がいくら下がっても在庫を貯蔵する能力がありません。
また、天然の石油は、地下水みたいに湧き上がってくるので、それを止めると再開するときにも莫大なコストがかかるようなので、なかなか停止するのも困難なようです。
そのような状況から投資家たちの警戒心が売りに転じて、原油先物がマイナスとなってしまいました。
新型コロナウィルスショックだけではない、株価の大暴落の原因3つとは?
株価大暴落は、新型コロナウィルスだけではない!株価の大暴落の原因3つとはなんでしょうか?
- 1つ目の理由は、ニューヨークダウ(正式名称はダウ工業株30種平均)の2社がエネルギー関連企業シェブロンとエクソンモービルであること
- 2つ目の理由は、世界の株式市場のオイルマネーは、世界の株式に占める割合が多い
- 3つ目の理由は、アメリカのシェール企業は、ハイイールド債(ジャンク債)が6割もあること
では、株価大暴落の原因について各項目について詳しく見ていきましょう。
①ニューヨークダウの2社がエネルギー関連企業だとどうして株価に影響するのか?
1つ目のニューヨークダウの2社がエネルギー関連企業だとどうして株価に影響するのか?
アメリカのニューヨークダウは、日経平均株価(日経225)と違い、30社と少ないので、その中のエネルギー関連企業であるシェブロンとエクソンモービルの株価が低下すると、ニューヨークダウが連動して株価の低下の影響を受けやすいことになるからです。
②世界の株式市場のオイルマネーが、世界の株式に占める割合が多いからとは?
世界の株式市場のオイルマネーが、世界の株式に占める割合が多いからとは?
たとえば、世界第2位の産油国サウジアラビアが原油価格の暴落により、産油国の財政が悪化し、コロナウィルスの影響で景気も悪化していきます。そうすると、株式を売却することになるでしょう。市場からオイルマネーを引き上げると大量の株をもっているがために株価が下がり株価暴落につながっていきます。
そのような株価下落に影響を及ぼすオイルマネーが世界の株式に多く存在しているので、石油価格の低下は、株価にも影響を与えることになります。
③アメリカのシェール企業は、ハイイールド債(ジャンク債)が6割もあること
アメリカのシェール企業は、ハイイールド債(ジャンク債)が6割もあることがどうして株価大暴落につながるのか?
世界最大の産油国アメリカのシェール石油が、採算が取れなくなり、倒産に追い込まれるとハイイールド債(ジャンク債)が6割もあるシェール企業は、
債務不履行(デフォルト)リスクが高まります。
そして、それが実際におこれば、金融機関も不良債権がでて、倒産に追い込まれることになるでしょう。
そして、このような警戒心が株を売ることにつながっていきます。
信用リスク(デフォルトリスク)株をもっているのは、やばいから株を売却したほうがいいということになります。
コロナ感染状況下で、原油価格が下がっていることから、株価暴落の発端は、シェール企業の破綻から始まる可能性がでてきています。
更に、欧州のハイイールド債は、リーマンショックのときの4倍になると言われています。
シェール業界でデフォルト(債務不履行)が生じ、シェール企業の破綻が欧州に飛び火していくことになると、世界の社債市場全体で信用リスク(デフォルトリスク)が大きな問題になっていく可能性があります。
株式市場関係者は、原油価格の大暴落によるシェール企業がデフォルトになることをかなり警戒しています。
だからこそ、万が一のために株を所有しているのは、危険だし、債権も金もやばいし、とりあえず、現金やキャッシュにしておこうと換金売りもでているから株価が大暴落している一面もあるということです。
2019年末から世界が、新型コロナ感染の影響を受け、原油価格大暴落によるダブルパンチで金融危機が起きる可能性も否定できないのです。
まとめ
経済は、複雑に絡み合っているので、株価暴落は、新型コロナウィルスが原因だけではなく、株価に影響を与えているのは、原油価格だということが理解できたのではないでしょうか。
3月9日(2020年)付、オイルプライス(OILPRICE)ニュースの予測によるとアメリカのシェール企業の半分は、なくなってしまうことになると言っています。
このような状況下で、トランプ大統領は、サウジアラビアとロシアに働きかけて、石油の減産に協力するように依頼して、再度減産を実施することで4月12日に合意しました。
サウジアラビアは、5月~6月(2020年)に日量970万バレルを減らし、その後も削減量を段階的に縮小しながら22年4月まで減産を継続する予定です。
アメリカのFRB(米連邦準備理事会)は、株価大暴落を止めるためとシェール企業を救うために、3月15日緊急利下げを行い、ほぼ0金利(0~0・25%)になり、また、米国債などを買い入れて、市場に資金を直接供給する量的緩和を始めることにしました。
2020年4月25日付のブルームバーグのニュースでは、ニューヨーク商業取引所の原油先物は、1バレル=16.94ドルで終了しています。
現在、アメリカの原油先物は、マイナスを乗り越えて、プラスに転換しました。
しかし、まだ油断はできません。もしかしたら産油国は、持っている株を売った場合、もう一段、株価が下がる可能性もあるでしょう。