サウジアラビアはなぜ観光ビザ解禁に踏み切ったのか?|サウジビジョン2030とは?
こんにちは!カマルです!
世界でいちばん入国が難しかったサウジアラビアの観光ビザが2019年9月27日に解禁になりました。
『わぁ、これから未知の国サウジ観光にいけるわ!』という方も或いは、
『未知の国サウジアラビアへ行ってみたいけど今までどうして観光ビザが発給されなかったのかしら?』『えっ、サウジって危険なところじゃなかったっけ?』という漠然とした疑問を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このブログでは、そんなサウジへ抱く疑問とどうして解禁になったのかを詳しく説明しています。
なぜサウジアラビアは、観光ビザが発給されなかったのか?
皆さんは、サウジアラビアが観光ビザを発給していないことは、ご存知なかったかもしれませんね。
ただ数年前には、グループ旅行に限って観光ビザの発給が許可されていましたよ。
サウジアラビアは産油国だから観光収入に頼らなくても良いと思っているかもしれませんが、実はトルコと同じ位の観光客(正確には、イスラム教徒の巡礼者+商用ビザや外国人労働者ビザ)がいるんですね。
近隣の産油国であるバハレーン、カタール、クェート、アラブ首長国連邦、オマーンなどの湾岸諸国も観光ビザは、昔から発給しています。
では、なぜサウジアラビアだけは、観光ビザを出していなかったのでしょうか?
サウジアラビアが観光ビザを出していなかった理由は?
サウジアラビアが観光ビザを出していなかった理由は、次の2つです。
- サウジアラビアには、メッカとメディナの2つの聖地があるので異教徒に来て欲しくない
- 外国人労働者が国の人口の3割近くもいてその中には不法就労者が多数いる
サウジアラビアには、メッカとメディナの2つの聖地があるので異教徒に来てもらいたくないとは?
一年を通して世界中からイスラム教徒が聖地巡礼(オムラ=小巡礼)にやってきます。
また大巡礼(ハッジ=イスラム教徒が生涯において果たすべき義務の聖地巡礼)の季節(イスラム暦12月)には、毎年250万人近い巡礼者が世界中からサウジアラビアを訪れます。
だから年間を通して毎年1900万人ぐらいの観光客が訪れます。
また商用ビザや出稼ぎ労働者ビザは、発給されます。なのでサウジアラビアに滞在する外国人は、
これは、トルコの年間の観光客の人数に匹敵します。
サウジアラビア国王は、イスラムの盟主でメッカとメディナの二大聖地の守護者であります。
イスラム教の聖地を汚されたくないというのが本当の理由です。
つまり異教徒にサウジへ入国されたら困るということでした。
外国人労働者がサウジの人口の約3割でまた不法就労者が多数いるからとは?
不法就労者が多数いるからという理由は、どういうことなのでしょうか?
外国人労働者がこの国に入る時は、スポンサー付きの就労ビザで入国しますが、途中で雇い主から逃げてしまい不法就労者になってしまうケースが結構多いんですね。
なのでもし観光ビザを発給するとますます不法就労者が増えてしまうという懸念がありました。
サウジアラビアが掲げる「サウジビジョン2030」の画期的な政策と巡礼者を増やす計画とは?
サウジアラビアが掲げる「サウジビジョン2030」とは?
「サウジビジョン2030」は、2016年4月にサルマーン国王により承認された経済改革計画です。
経済開発評議会(ムハンマド・サルマーン副皇太子が議長)が作成したもので2030年までの経済改革計画が盛られています。
以下が、経済改革の主旨になります。
石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していくことを強調した。発表された同計画における目標は以下の表のとおりである。また、これらの目標を達成するための手段として、国営石油会社サウジアラムコの5%未満の新規株式公開(IPO)、民営化による透明性の向上と汚職抑制、軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入などがあわせて発表された。
引用元:中東かわら版
また「サウジビジョン2030」の発表から約3年後に、観光ビザ解禁(2019年9月27日)が発表されました。
サウジアラビアの画期的な政策と巡礼者を増やす計画とは?
観光ビザ解禁は、サウジアラビアが掲げる「サウジビジョン2030」を成功に導く画期的な政策のひとつでもあります。
観光客が増えることにより、観光収入も増え、若者の雇用も大幅に拡大でき、国内の消費も必然的に伸びていきます。
「サウジビジョン2030」のコンセプトは、「活気ある社会」「盛況な経済」「野心的な国家」でその中でもひときわ目立つ政策は、巡礼客を4倍近くまで伸ばすことにあります。
世界のイスラム教徒は、16億人います。
近年イスラム教徒の多いアジア諸国の経済発展に従い、年々ハッジ(大巡礼)に参加する人たちが増え始めました。
しかし、公共交通機関のインフラが整備されていなかったので、各国の巡礼者をすべて受け入れることは、安全上許されませんでした。
そのためサウジアラビア政府は、サウジアラビア国民だけではなく、諸外国のムスリム達にもハッジに参加できる人数を制限してきました。
しかし、公共交通機関の開発により、これから徐々に巡礼客を増加させる方針です。
サウジアラビアが掲げる「※サウジビジョン2030」によると巡礼客(小巡礼客と大巡礼客)を800万人から2030年までに3000万人まで増やす計画が書かれています。
2020年までには1500万人という目標もかかげられています。
メッカからメディナまでの両聖都間を結ぶ全長453kmのハラマイン高速鉄道(2018年10月11日に営業開始)は、スペインにあるボンバルディアの工場で製作されて建設されました。
この鉄道は、メッカ、ジェッダ、キングアブドラ・エコノミックシティ、メディナといった主要都市間を結ぶもので、時速300kmで走行しています。
この他にも公共交通機関の地下鉄では、メッカメトロとジェッダメトロ、メディナメトロが計画中です。
リヤドメトロは、現在工事中で2019年に開通予定です。
サウジアラビアがなぜ観光ビザを発給することにしたのか?|サウジへの渡航歴があってもアメリカ入国はできるのか?
サウジアラビアはなぜ観光ビザを発給することにしたのか?
世界でただひとつ観光ビザ発給を拒んできたサウジアラビアがなぜビザ解禁に踏みこんだのでしょうか?
石油の可採年数は、50年から100年と言われているので石油資源に依存しない政策にシフトしたからです。
これからは、石油に変わるエネルギーの産出(太陽エネルギーなど)、アメリカのシェール石油などによる供給価格の低迷などを見すえて石油依存ばかりでなく観光収入にも目を向け始めたからです。
サウジの渡航履歴があってもアメリカへ入国できるの?
もしかして、サウジへの入国スタンプがあるためにアメリカへ入国できなかったらどうしようなどとご心配されている方もおられるかもしれませんね。
過去にパスポートにシリアに入国した履歴があるために アメリカの学術研究会に出席しようとした人が 入国を拒否された例がありました。
また2018年8月時点での情報ですが、2011年3月1日以降にシリアやイエメン、イラン、イラク、スーダン、リビア、ソマリアへの渡航歴があると日本人に適用されているビザ免除プログラム(ESTA)を受ける資格がなくなります。
つまりアメリカへ渡航するためには、観光ビザを取得しなければなりません。
またアメリカに滞在している女性がイランに住んでいる祖母を訪ねて行ったところアメリカへの再入国を拒否されたニュースなどもありました。
でも大丈夫ですよ!
サウジアラビアはアメリカへの入国は拒否されていません。
したがってサウジへ観光ビザで入国したからといってアメリカへの入国制限を受けることはまずありません。
終わりに
サウジアラビアが観光ビザを今まで発給してこなかったのは、2つの理由があります。
一つは、イスラームの盟主であるサウジアラビは、メッカ、メディナの2つの聖地の守護者であり、異教徒が聖地に入ってこないようにすることが目的でした。
二つ目は、外国人の不法就労者の侵入を防ぐためでした。
世界でただ一つ「観光ビザ」を発給しなかった国サウジアラビアに、これからビザ解禁により全世界から観光客が押し寄せてくることでしょう。
しかしながら、イスラム教の聖地であるメッカとメディナは、イスラム教徒以外の人は入ることができません。
これからサウジアラビアは、脱石油依存のためにドバイをお手本に既存の世界遺産以外の登録申請や観光資源の開発に力を注ぐことになるでしょう。
ドベイをお手本といってもサウジは、イスラーム教の盟主で、2大聖地の守護者と明言しているので自由気ままな服装やアルコールの持ち込みなどは当然ムリです。
しかし日本の5,7倍もある国土に5つの世界遺産が散らばって存在する歴史と伝統のある国なので必ずドバイ観光以上の有意義な旅行になることは間違いないですよ。
いままで長い間ベールで包まれた未知の国サウジアラビアが皆さんの前にいよいよ登場します。
砂漠の国、ラクダの国を訪問して日本とは全然違う伝統的でエキゾチックな文化を持った中東の魅力を思いっきり満喫してくださいね!